失敗例から学ぶ:電話申込・ダブルブッキング…「ラブホ予約アプリ」のマーケティングミス

PASONA_22_TP_Vlovehotel_versionあのGREEの子会社がラブホテル予約アプリを出していたのをご存知でしょうか?アプリに詳しい方、ラブホに詳しい方でも多分知らない人が多いと思います。なぜならこの「Tonight for Two」というアプリ、2014年8月11日にiPhone版とAndroidがリリースされましたが、なんと9月3日24時をもってわずか1ヶ月で終了。「急なご連絡となりまして、ご利用いただいているお客さま、また事業者さまには大変ご迷惑をおかけしますことをお詫び申し上げます」との謝罪メッセージがWebサイトにいきなり掲載されました。
このスピード撤退・・・いったいなにが失敗の原因だったのでしょうか?

スピード撤退したラブホ予約アプリ「Tonight for Two」はそもそもどんなアプリだったか

「Tonight for Two」はそのネーミングからも想像できるように、ホテル予約アプリとして現在も公開されている「Tonight」というホテル予約システムをベースに開発されていました。
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【Tonight】 ホテル予約はTonightで検索〜急な出張にも便利なアプリ
https://goo.gl/vFFgKU

起動するとアプリの地図情報を使って現在地から近い当日泊まれるホテルが表示され、ホテルが決まればクレジットカード番号を入力して予約完了、などのしくみは同じでした。18禁のホテルでは予約時に年齢認証画面を表示するという配慮も完璧。

また、ビジネスモデルは下記の通りで各関係者のメリットはわりとはっきりしていました。
■ユーザー側メリットとしては「ホテルに行ったけど満室で入れない」というありがたくないシーンがなくなる
■ホテル側にとっても「当日の空き室の稼働率向上」がアプリ経由可能になります
■アプリ開発側はホテルから初期手続料3万円と予約成立時の手数料を徴収

開始時は関東のホテル情報約30件を掲載していました。「今後エリアを広げていく計画です。」とうたっていたのですが、結局1ヶ月で撤退・・・。システム的にベースとなった「Tonight」が現在でもアプリ公開を続けてサービスを提供していることからも、システム的な不具合や使い勝手が悪いなどのUI部分がスピード撤退の原因といったわけでもなかったようです。

「Tonight for Two」撤退の真相はマーケティングの失敗

「Tonight for Two」はスマホの普及で格段に便利になった「店舗予約アプリ」に分類されます。この分野はネットで気軽に予約できるスタイルがスマホユーザーに受け入れられ、さまざまな分野でアプリが提供されています。

「店舗予約アプリ」の店側としてのメリットは主に2つあります。ひとつは、これまでの電話だけの予約窓口にアプリ経由の窓口が加わることで、インターネットユーザーの予約需要を取り込めることです。もう一つは、アプリからの予約に店舗の電話窓口への電話通知機能をもたせて予約業務を1本化することにより、電話とネットからの予約業務を統合して予約モレやダブルブッキングを防止できることです。これまでWebサイトからの予約では、電話とネットと確認の手間が従来の2倍になっており、現場でのミスが頻繁に起こっていました。アプリに電話通知機能を仕込むことで、こうした現場での電話予約ミスが激減したわけです。

このように、「Tonight for Two」は、本来アプリとしてユーザーに受け入れられる要素を充分にもっていたわけです。実際、居酒屋や美容院などの店舗予約では、電話通知機能つきの予約アプリシステムを導入した効果についてはかなりポジティブな結果が出ています。

では、「Tonight for Two」の失敗の原因は・・・。
それは、初歩的ともいえるマーケティングの失敗でした 。

そもそもラブホは「クリスマスにはぜったいにあのあこがれのホテルでエッチしたい!」というような彼女の密かな願いをかなえるためには使われない!ということがあげられます。半年や1年前から予約するという場合、普通は高級ホテルを予約するでしょう。「今日は特別に予約しておいたホテルがあるんだ・・・」と切り出して連れて行かれた先がラブホだった・・・というのは、女性からするとかなりビミョーに感じるのではないでしょうか・・・。

さらに「予約」という仕組みをめぐるビジネスモデルの失敗もあり

ビジネスモデル的にはもっと致命的なマーケティングの失敗があります。通常のホテルは「ご休憩」という概念がないのでホテルの稼働率は原則として1日1回転です。つまり1予約が取れれば1回転という合格点がとれます。しかしラブホでは1客室1日3回転から4回転が優良客室です。つまりラブホの利益率を上げているのは「思い立ったらスグ!」という予約なしの飛び込み客なのです。もし予約をして連絡もなしにキャンセルされたら回転率が即落ちます。

また、ラブホのもう一つの収益源が「延長」です。「もっと彼女とこの時間を楽しみたい」⇒フロントに電話して「延長」という流れで自動的に回転率が上がります。もしこの時間に予約が入っていたら、来るかどうか分からないにもかかわらずせっかくのお客様の「延長」をお断りしなければなりません。もし入れてしまって予約客がきたら、ダブルブッキングになってしまいます。

【まとめ】
ホテルの予約をアプリで行うというコンセプト自体は非常にすばらしく、実際に電話予約以外の有力チャネルとしてアプリからの予約は増加しています。電話通知機能などでダブルブッキングなどを防ぐ仕組みも洗練されており、予約アプリ導入で稼働率が上がったというホテルが大半です。
しかし、この成功体験を「ラブホ」という特殊な利用形態とビジネスモデルをもつ業界にそのままあてはめてしまったのが、この「Tonight for Two」の失敗だといえるでしょう。
便利なシステムが本当に普及するために胃は優れたマーケティング戦略が必須である、といのがこのスピード撤退の教訓だといえます。