PHSのサービス終了。病院や工場内の連絡手段はどう変わる!?

PHS

そもそも、PHSってなんだ?

PHSは「Personal Handy-phone System」の略で、1995年に登場したポータブル通信サービスを指します。

PHS端末から半径500m以内の固定電話回線に無線接続し、接続先の回線を利用して長距離通信を可能にする仕組みとなっています。

アンテナ設置が前提となる性質上、通信可能エリアは限定的ですが、当時の携帯電話よりも高品質な通話を実現していました。

全盛期には国内PHSの契約数が700万件に到達し、屋外のみならずオフィスや家庭内でもコードレスな内線電話機として利用されてきたのです。

ほんとうに使えなくなるの?

公衆PHSは既にサービス提供が終了してしまったものの、企業や施設内での連絡手段として利用される構内PHSについては、一概に「使えなくなる」というわけではありません。

具体的には、無線通信機器が旧規格に則る構内PHSは利用不可能となり、新規格の通信機器を用いた構内PHSは当面は運用し続けることが可能なようです。

しかしながら、新規格の構内PHSに関しても、今後数年の間に事業者が突然サービス終了を宣言しない保証はありません。

また、実際に病院や工場などの現場でPHS端末を利用してきたユーザーからは、PHSを用いたコミュニケーションに関していくつか課題点も指摘されています。

PHSの課題 ①受信がスムーズでない

現在採用されているPHS端末の多くは病床に設置されたナースコールと連携しています。

ナースセンターで一次受けをしなくとも、看護師が持つ各PHS端末に通知を行うことができます。

一方で、各端末への呼び出しが技術的には一斉発信になっていないことから、「端末によって着信のタイミングにバラつきがあり、一部のスタッフに不公平感を与えている」といった指摘が見受けられます。

ナースコール対応のPHSの中でもなぜか着信が遅い端末があって、先輩から早く出るように催促されて気まずい思いをしたことがある。なぜPHSの着信に差があるの?

構内に設置したアンテナと無線接続するPHSでは、指定したすべての端末を完全に同じタイミングで呼び出すことは難しく、アンテナ設置数や電波状況次第で最大数十秒単位の遅延が生じてしまうのです。

「私のPHSばかり速く着信するのは不公平だ」という愚痴で済むうちはまだ微笑ましいもので、医療機関におけるナースコールの呼び出し遅延は患者の生死に直結する深刻な問題です。

PHSの課題 ②通話専用の端末には限界がある

ところで、医療機関において携帯端末を利用するシーンはなにも通話だけとは限りません。

携帯端末の進化に合わせて、ここ数年は医療向けITシステムでもモバイル化が進んでおり、電子カルテや介護記録システムをスマートフォンで操作することができるようになりました。

複数の患者を受け持ち絶えず院内を動き回る医療スタッフにとっては、PC作業のためだけに移動していた時間を削減してくれるため嬉しい進化といえるでしょう。

そのような時代の流れから考えると、電話回線を無線通信で延長することによって通話を実現するPHSは、基本的に通話以外の機能には対応しておらず今後取り残されていくことが予想されます。

結果として、ナースコールやスタッフ間の通話にはPHSを使い、電子カルテや介助記録システムへの入力作業はスマートフォンなどの別端末を使うという運用形式が生まれてしまいます。

このような端末の使い分けは、ただでさえ持ち物が多い医療従事者のポケットを圧迫するだけでなく、業務効率の観点からも理想的とは言えません。

PHSの課題 ③緊急連絡はどれ? PHSのオオカミ少年化

通話に特化したシンプルな機能性で手軽にコミュニケーションを取ることができるPHSですが、電話をかけるハードルが低いからこそ生じる問題もあります。

それは、PHSのオオカミ少年化。

本来、急を要する患者やスタッフからのアラート通知として採用されるPHSは、所持者が確実に着信に気づくことができるように、大きな通知音を設定するのが一般的です。

着信に気づいたスタッフからすれば、PHSが鳴っただけで「何が起きたのか」と身構えるはず。

しかし、ふたを開けてみれば同僚からの緊急度の低い業務連絡だった、というケースも少なくないようです。

院内PHSは便利ゆえに、主治医に直接問合せするといったマナー違反も起きてしまうので、節度を守るためのルールが必要ね。

緊急事態が起きたのだと警告されて身構え、いざ確認してみると慌てる必要もない連絡だった。

アラートを受ける担当者には身に覚えのあるお話かもしれませんが、「取り越し苦労」のような警告が続くと緊張感が緩み、本当の緊急事態が起きた際に対応の出足が鈍ってしまうかもしれません。

手軽な連絡手段があればつい使ってしまうのは当然の心理ですし、発信元の確認ができないPHSの特性上、目を瞑って我慢するしかないデメリットなのかもしれません。

<続きを読む◆PHSからの乗り換え 「電話まわりの統合化」がポイント>

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