技術の進歩が目まぐるしい現代において、今日感動したサービスが半年後には陳腐化し話題にも上がらなくなった。
そのような風化は以前よりも早いサイクルで訪れます。
追い風に乗って、ローンチしたサービスが話題性を失っていつの間にクローズしていたということも珍しくはありません。
技術者やプログラマーには目新しく先進的であっても、新しい技術がユーザーにとってフィットするか、歓迎されるかといった問題はまた別のところにあります。
新しい技術だけが尊いわけではありません。
どの技術同士の組み合わせが、ユーザーにより価値のある体験をもたらせるかが大切です。
プロフェッショナル達が知恵を絞りつくしたはずなのに、意外なところから閃きが降りてくるといった、そんな灯台下暗し現象はどの企業でも心当たりがあるのではないでしょうか。
テレワークの加速とともに、脱ハンコ文化が唱えられましたがハンコそのものが不便で、古い慣習という面しか持ち合わせていないかといえばそれは違います。
ハンコに軍配の上がる持ち味もあれば、デジタルのハンコの利点もあります。
ここでも、時と場合に応じて使い分ける柔軟さこそが大切だと感じさせられます。
ひとえに「音楽を聴く」といっても、求めるものがひとそれぞれです。
なんとなく聴くことさえできればいいというリスナーもいれば、音質を重視し、没入を求めるリスナーもいます。
音楽を聴くためだけに、保管が大変なアナログレコードに針を落とす行為は、再生するだけのスマートフォンの手軽さと比較するとバカバカしく感じる方もいるでしょう。
しかし、アナログレコードの流通量は減りさえいても、絶滅の道をたどってはいません。
音楽配信サービスがユーザーを伸ばし続ける中、2020年上半期のレコードの売上高がCDの売り上げを追い抜き逆転したというニュースは世界中を驚かせました。
日本国内でも、カセットテープの人気が再燃し、かつての懐かしいフォルムのウォークマンが売買されるという現象が起きています。
カセットテープ専門店「waltz」はカセットテープの古き良き時代の名残を伝える中目黒の人気店で、オーナーの角田太郎氏は前職がamazonという経歴を持っています。
最先端の物流に囲まれる中で、角田氏が突き当たった真理も似たような感覚だったのかもしれません。
デジタルは無機質で人間味を置いてきぼりにしてしまうことがあります。
アナログからにじみ出る人間味やエモいという感情は、デジタルネイティブの心の渇きの揺り返しなのかもしれません。
「音楽を聴く」だけなら手軽に目的を果たせる時代なのに、わざわざ手間のかかる行為を選ぶリスナーがいると前項で触れましたが周りを見渡せば「こだわり」はそこここで見つかるでしょう。
インスタントコーヒーならお湯を入れるだけなのに、わざわざ豆を挽く。
パソコンなら、すぐにキレイに仕上がるのに手書きにこだわる。
しかし、ひと手間かけるからこそ記憶に残る。 情緒を感じられる。一味違う感動が味わえる。
という感覚を我々は目にしています。
これは、販促手法にも同じことが言えます。
どこかで見たキャンペーンは、ユーザーにとっても目新しさにかけるため
「どうせ〇〇と一緒でしょ」
とネガティブなイメージを持たれやすくなってしまいます。
電話はスマートフォンの普及によって一人一台(場合によっては複数台)持つことも当たり前になった今、電話を使ったキャンペーンはどこか垢ぬけない印象を与えてしまうかもしれません。
しかし、そのアンバランスさはユーザーにとって「ちょうどいい」バランスなのかもしれません。