現在も根強い支持を受ける市外局番ですが、冒頭でご紹介したように電話番号に対する考え方を変え始めている企業もあるようです。
これまで利用してきた市外局番から050番号への乗り換えを実施したあいおいニッセイ損保は、番号移行の理由を「在宅勤務への対応と、長期的な通信費削減のため」と説明しています。
テレワーク下でもオフィス勤務時同様の生産性を維持するには、電話に係る業務を自宅でできるような仕組みが不可欠です。
現状では、基本業務を在宅化しつつも電話対応は例外的に出社して行っているケースが多く、SNSなどでは「電話のためだけの出社」を強いられる会社員たちの不満が数多く見受けられます。
代表番号への着信を在宅勤務中の社員が持つ携帯端末などに転送するという対応策も存在しますが、転送先の社員端末ではどこからの着信なのかがわからなかったり、折り返し電話の際に代表番号からは発信できない、さらに転送先に設定できる番号数に制限があるといった課題が残ります。
そこで、テレワーク移行にあたって不安の残る電話転送の代わりにあいおいニッセイ損保を含む企業が選択しているのが、クラウドPBXです。
電話システムそのものをインターネット上で構築・管理するクラウドPBXでは、一般的にIP電話用の050番号が利用されます。
クラウドPBXでは市外局番も利用可能ですが、番号利用料・通信料が050番号の数倍〜数十倍かかってしまうほか、事業拠点がある地域ごとにそれぞれ市外局番を取得する必要が生じます。
事業拠点ごとに市外局番を取得する運用方法は、拠点や従業員の増減に応じて自在に電話番号を管理できるクラウドPBXの長所を消してしまうのです。
それでもなお市外局番の信頼性に固執する流れは残るかと思われますが、050番号を利用する方が運用の手間とコストどちらの観点から考えてもより現実的な選択肢であることは間違いありません。
ビジネス業界で揺るがぬ地位を確立してきた市外局番。
信頼に足る企業の証として、市外局番で始まる電話番号を取得することは重要な役割を果たしてきました。
しかし、新型コロナウイルス拡大を受けて加速したテレワーク需要が「市外局番神話」に疑問を投げかけており、市外局番以外の電話番号、とりわけ050番号に対する企業のイメージは変わり始めています。
050番号の採用が広がっている今、これまで企業が抱えていた「市外局番でなければ社会的信用を得られないのではないか」という漠然とした不安はナンセンスなものになりつつあるようです。
With/Afterコロナ時代の多様な働き方に対応していくためには、過去の慣習に捕らわれることなく実利に適った選択をすることが求められています。
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