「電話によるおもてなし」はAIに奪われない仕事?

コミュニケーションの適切な距離

いま、なぜ電話がなぜ注目されているのか

前述のWeb接客ツールやメール、チャットが便利という声が多く上がっている中で電話の問い合わせが注目されているのはなぜでしょうか。

2019年10月にマイボイスコム株式会社が行った『問い合わせ窓口の利用』に関するインターネット調査では「問い合わせ時に利用したい手段は?」という問いに対して10,271件中、「電話」が7割弱、次いで「メール」「問い合わせフォーム」が各40%台という結果となっています。

この結果からも、様々なコミュニケーション手段があるにも関わらず多くの方が電話での問い合わせを望んでいる場合も多いことが分かります。

感情を伝えやすいコミュニケーション

電話は通常、相手の顔は見えません。

それなのに、電話の向こうの相手にペコペコ頭を下げているサラリーマンを見かけたことはないでしょうか。

事情を知らない第三者からすると、滑稽以外のなにものでもありませんが口先ではなく、心の底から謝罪しているのだなということは伝わります。 

この熱量を、テキストで伝えるのはなかなか難しいのではないでしょうか。 

検索すれば、模範例はすぐ見つかりますから、チャットやメールで流ちょうな日本語を並べた謝罪文はコピペかもしれないと相手に思われてしまう可能性すらあります。 

謝罪やお礼、おもてなしなどは感情表現が印象を大きく左右します。

そのため、AIやロボットにはまだ、不得手な分野と言われています。

株式会社シンカのサービスに「おもてなし電話」というサービスがあります。

素敵なネーミングだと思うのですが2019年11月よりサービス名を「カイクラ」と名称変更しています。

顧客データベースにあらかじめ登録してある電話番号からの着信があったとき、お客さんの名前や利用履歴などが表示され、その情報をもとにきめ細かい接客が電話口で行えるというサービスです。

「●●さん、いつもご利用ありがとうございます。」

スタッフの第一声に、手厚いおもてなしを感じるのも電話だからこそと言えます。

おもてなしの精神

先日、放映されたクローズアップ現代では“もしもし革命”進行中!~いま電話になにが?~というテーマで電話も含めたコミュニケーションのあり方について様々な意見が交わされていました。

その中で日本電信電話ユーザー協会の方が語られていた一言にはハッとさせられます。

「人ではなくてもできるものが、どんどん増えていく中で、電話は“あなたのためだけに“というのが、贅沢で企業価値を生んでいくと思う。」

まさに、効率を追い求める“現代におけるコミュニケーションの揺り戻し”とも言えるでしょう。

上手なコミュニケーション手段との付き合い方

利益を追い求めるのが企業活動の目的である以上、無駄なことには時間も、コストもかけるべきではないという考えももちろんあります。

効率的を求めるという世の中の流れに異論はありませんが、効率主義の潮流に置き去りにされている人たちの存在を忘れてはいけません。

何事も効率だけでは割り切れないことを私たちは知っています。

企業としては、「接客から得られるデータを扱いやすい形で収集しサービスに役立てたい」という考えがありますがユーザーに不便を強いていては心が離れてしまうことも考えねばなりません。

「Web上での対応では解決しない」、または「解決まで時間や手間がかかる」とユーザーが感じているのであれば、サポート体制の在り方をもう一度見直すことをお勧めします。

やがて人間はAIに仕事を奪われる。という文脈で「人間は人間にしかできない仕事を」という結論が語られるのを見かけますが、まさに「人間が対応できる高度な仕事」こそが電話によるおもてなしなのかもしれませんね。

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